犬のカーミングシグナル~提唱と学問的研究~

「犬の感情を読み取る」「犬の言葉を理解する」等の本の中で”カーミングシグナル”という言葉が出てきているので、知っている人も多いと思います。
カーミングシグナルは「Calming=落ち着かせる/Signal=信号」の言葉通り、他の犬や人との関わりの中で相手や自分を落ち着かせたいときに見せるサインのことを言います。
カーミングシグナルの提唱
ノルウェーのドッグトレーナー、トゥーリッド・ルーガス氏と仲間たちが1980年代に多くの犬を研究する中で「犬の行動やしぐさには意味があり、それらは犬自身及び他者を落ち着かせるためのものである」と提唱し、2005年に彼女が著した本に初めて”カーミングシグナル”の言葉が出てきました。
現在、カーミングシグナルはルーガス氏によって全27種類に分類されています。
1.相手の犬にゆっくりと歩いて近づく
2.体を横にそらす
3.カーブを描きながら近づく
4.見知らぬ犬に体の横を見せてお尻から近づく
5.尻尾を振る
6.座る
7.初対面の犬と出会った後、どこかへ行く
8.前脚を上げる
9.鼻を持ち上げる
10.2頭の犬の間を割って入る
11.あくびをする
12.体を振る
13.体を低い位置にして飛び掛ろうとしている遊びの体勢
14.尻尾を振って体を低くする
15.子犬のようにじゃれる
16.そっぽを向く
17.犬同士が顔を見合い口元を後ろへ引く
18.歯をカチカチと鳴らす
19.口と鼻の周りを舐める
20.口をパクパクさせる
21.背中を向ける
22.おしっこをする
23.その場所にいないように振舞う
24.固まる
25.地面の臭いを嗅ぐ
26.伏せる
27.しようと思ってできなかった行動を別の行動に転移する
カーミングシグナルの学問的研究
2017年4月にイタリアのピサ大学獣医科学科の研究チームによって『飼い犬における同一種内の視覚的コミュニケーションの分析:カーミングシグナルに関する予備的研究』という論文が発表されました。
「予備的研究」とあるように、より明確な結論を出すためにはさらなる研究が必要となりますが、2017年以前はルーガス氏の提唱を元にドッグトレーナーの経験と観察によって読み取られていたカーミングシグナルに科学的な裏付けが取れそうということになります。
次回はカーミングシグナルの具体的な例とその時の犬の心情についてお話しします。
<参考資料>
・Analysis of the intraspecific visual communication in the domestic dog(Canis familiaris):A pilot study on the case of calming signals
(Department of Veterinary Sciences,University of Pisa,Pisa,Italy,2017)