食事が関係?タンパク質と攻撃行動

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家族の一員として室内で犬を飼うことが多くなった近年、犬と人との関係性はより密度の濃いものとなっています。その結果、無駄吠え・分離不安・攻撃行動といった問題行動が深刻な問題として表面化しています。

咬み・吠え・唸りといった攻撃行動は、『他者への威嚇行動や危害を与える行動』と定義されています。攻撃行動の要因には、先天的な疾患や気質、社会化不足など様々ですが、脳内の「セロトニン」という神経伝達物質の濃度も影響していることをご存知でしょうか。

セロトニンの濃度と攻撃性に関連があることは、犬を含む多くの動物で確認されており、脳内のセロトニン濃度の低下は犬の闘争的・攻撃的な行動を引き起こすと言われています。

ノルアドレナリンやドーパミンと並んで、三大神経伝達物質のひとつとされるセロトニンは「トリプトファン」を前駆物質として脳内で作られます。トリプトファンは必須アミノ酸であり、肉類や乳製品などに多く含まれます。

それでは、アミノ酸を多く含む高タンパク(肉量の多い)の食事をとれば、脳内のセロトニン濃度は高まるのでしょうか。

高タンパクの食事は、トリプトファンだけなくその他のアミノ酸の量も多くなります。アミノ酸同士は血液脳関門を競って通過しようとするため、トリプトファンが血液脳関門を通過しにくくなり、結果的にセロトニンの低下を引き起こします。つまり、高タンパクの食事は犬の攻撃性を高めてしまうと考えられます。

逆に、低タンパクの食事やトリプトファンを加えた食事が犬の攻撃性を低下させるかについては、下記のような報告があります。

●7頭の攻撃的な犬に、低タンパクの食事(15〜18%)を与えた
→3頭は変化がなかったが4頭はすぐに攻撃性が減少(うち2頭はその後再発)した

●テリトリー攻撃がみられる犬に、2週間低タンパク(17%)・中タンパク(25%)・高タンパク(32%)の食事をそれぞれ与えた
→低及び中タンパクの食事を与えた場合に有意に攻撃性の低下がみられた

●攻撃的な犬に「高タンパク(30%)の食事」「高タンパクの食事にトリプトファンを追加したもの」「低タンパク(18%)の食事」「低タンパクの食事にトリプトファンを追加したもの」の4種類を与えて行動を比較した
→家族に対する優位性の攻撃について、高タンパクの食事にトリプトファンを加えたものと、低タンパクの食事で攻撃性が低下する効果がみられた
→テリトリー攻撃について、低タンパクの食事にトリプトファンを追加したもので攻撃性が低下する効果がみられた

このように食事のタンパク質含有量を調整し、脳内へ取り込まれるセロトニンを増やすと攻撃行動が減少する可能性が明らかになっています。
もちろん高タンパクな食事を食べていても攻撃的でない犬もいますし、その逆も同様です。
必ずしも低タンパクの食事が良いとは言えませんが、これらの効果を期待したドッグフードも市販されていますので、うちの子の攻撃行動に悩む飼い主さんは参考にしてみてくださいね。

<参考資料>
・犬における問題行動 (荒田 明香, 2017)
・ペット栄養学会誌「食と問題行動」(水越 美奈, 2014)
・The influence of nutrition on canine behavior. (R. A. Mugford, 1987)
・Effect of dietary protein content on behavior in dogs (Dodman NH, 1996)
・Effect of dietary protein content and tryptophan supplementation on dominance
aggression, territorial aggression, and hyperactivity in dogs (JS DeNapoli, 2000)

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